腑に落ちない「人手不足」と「労働人口減少」のごった煮感

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それって、ミスマッチ…

 コロナ禍が起きる前、バブルの頃を少し思い出すくらいに「人手不足」と言うキーワードがそこここで見られました。ITならエンジニアの不足で案件が滞り、飲食店でも正社員募集を張り紙で告知しているお店が目立つくらいです。そして令和27年頃から有効求人倍率が1.0倍を越え、失業率も低い水準に留まりました。

 この中で、盛んに言われたのが「外国からの高度人材の受け入れ」と「移民の受け入れ反対」という対局の意見です。

  一方は「人が居ないのだから海外から誘い込まなければならない。今は人の取り合いだから早く手を上げなければならない」と言う主張。もう一方は「日本人の人材活用を先にすべき。移民を進めた欧州諸国の多くは、様々な問題に直面している」というのがざっくりと纏めた内容でしょう。

 まず、私個人の立ち位置は「移民」は「国民」とは違う。まず国民を大切にしてこそ、国が成り立つというものです。

 国の「枠」が残っても、例え移民が豊かになったとしても国民自体が豊かでなければ国としては貧しいのです。

 そしてコロナ禍にあって外国人がおいそれとは来日できなくなって、その事自体でショックを受けている産業もありますが、一方で「生産力が落ち込んでいる」のか否かは各種統計の更新を待つしかありませんが、人手不足が叫ばれなくなっている昨今を考えれば雇用統計としては、人余りの状況に傾いているのかと思っています。

 ただこの状況は一過性、つまりコロナ禍の落ち着きとともに復旧するものと、産業の構造的な変革を迎えざるを得ないものとに大別できるように思います。

 コロナ禍が落ち着くに連れ、おそらく「モノづくり」つまり製造業は、国際的な需要も高まる事で復活しやすいのかと思います。また物流も製造の復活があれば需要が高まります。非対面販売が増加していることも追い風になると考えています。自動運転なドローンなどの活用が労働力の訴求を下げる可能性はありますが、一気にかつ早期に復旧するとは思えず、人が求められる産業です。

 一方、サービス業は微妙です。先日書いたコンビニを含め、自動化が進み労働集約型から少しでも脱却する方向性があります。つまり産業としては生き残るが、労働力を以前ほど求めない形が芽吹いているのですね。その一方で医療や介護を考えると医療自体はリモート化の適用性、可能性が広がっているのでしょうが、介護については古来からの3K状況が言われている人が必要な職場からの脱却は難しいように思えます。

 これは販売と言う全体感でも対面販売が非対面販売へとシフトしている流れは戻らないでしょう。金融も同様ですね。窓口業務は以前よりも急速に不必要になる一方で、産業としての需要は変わりません。内部構造の変化が起きやすくなっているのでしょうね。

 農業などの一次産業は、徐々に自動化は進むでしょう。但し、これも一気にシフトすることはなく、まだまだ芽吹く段階だと思いますし、既に非常に長い時間を掛けて人に依存しない形を作ってしまっている状況だと考えています。これは「省力化」が決してポジティブなだけではなく、人出が掛かり生産性を上げにくいところから人がいなくなっている状況、つまり過疎化が更に進む可能性を秘めているように思えるのです。

 私が属するITと言う産業も微妙な状況です。ここまで書いたように「トレンド」は見えても産業全体のパイの増減が見づらいのです。別の言い方をすれば農業と同様なところがあり、長い時間を掛けて省力化が考えられてきた産業です。しかし省力化と言っても一時はオフショアとして海外に生産力を求め、またZoomやSalesForceのように海外のサービスを使っているだけの状況が増えているのは確実です。利用者から見た産業全体のパイが増えているとしても、国内生産者から見たパイとは比例していないことになります。

 こう書いていくと「人がいなければ生産できない」と叫ぶ産業と、そうでもない産業とが細かく色分けされて議論されるべきなのですが、どうも雑駁に「ITに人がいない」「サービス業に人がいない」では、他の産業からのシフトや自動化の推進で解決できるのかという検討を封殺してしまっているように思えるのです。

 メディアを含め、わざと課題をメッシュを粗くして議論をボカしているように思えて仕方ありません。